「友禅」と一口でいっても、実は二つの意味がそこにはあるのです。一つめの「友禅」は染め技法のこと。一般に「友禅染」といわれる染色方法で、今から350年ほど前の元禄時代にほぼ今の形にまとめられました。別名を「本糸目染」ともいいます。もう一つの「友禅」は、文様の事をいいます。「友禅文様」などという言葉も耳なじみにあると思いますが、実はこの友禅という言葉は人の名前だったのです。元禄時代、知恩院さんの門前に宮崎友禅齋という扇子絵師が住まいしていたそうです。当時の扇子というと伊達男がその粋を競う流行品だったようで、人気が高い宮崎ら扇子絵師は井原西鶴「好色一代男」にもその名が残るほどですから、さながら現代のカリスマ・イラストレーターのようであったと思われます。さて、この宮崎友禅齋が呉服屋の依頼を受け、扇子ならぬきものに絵を描いたところ、これが京の都で大流行してしまったんだそうです。この友禅齋デザインが「ゆうぜんひいながた」という雛形本になり、後生、「友禅柄、友禅文様」として呼ばれるようになりました。ちなみに、染め技法のことをなぜ友禅染と呼ぶようになったかは、定かではありませんが、友禅齋が活躍したころにちょうど「本糸目染」技法が完成し、糸目のりを使い絵画的な意匠を染めるのに適していたこのを使って友禅文様を染めていたのがきっかけで、染め技法そのものも「友禅染」と呼ばれるようになってしまったといいます。
さて、前置きが長くなりましたが、友禅には「染め技法」と「意匠」の重要な2つの要素があることがおわかりいただけたと思います。この2つの要素は切っても切れない関係にあり、優れた意匠、図案を完成度高く染めるには高い技術力と長年の経験とカン、それに感性が必要になります。生み出された作品はお客様の家で代々受け継がれていきます。いい図案でより良い作品を作るための努力、、、当工房では職人の腕が試される染めの手間暇がかかる難易度の高い意匠にあえて挑戦し、また、本物の友禅技法だけをつかいうことで、代々受け継いでいただける品物に相応しい品質と品格を持った友禅を作ることができるのだと思うのです。

